抄録
熱膨張係数の大きいリューサイト結晶を含有する陶材の強さに及ぼすリューサイト結晶の挙動について検討することを目的とした.このため,熱膨張係数,組成および軟化温度の異なる3種のガラスマトリックスを使用してリューサイト結晶粒子を分散したガラス質陶材を作製した.その結果,リューサイトを含有する陶材の強さはガラスマトリックスの組成,熱膨張係数および軟化温度の違いに影響されることがわかった.特に膨張係数のミスマッチの大きいホウケイ酸ガラスをマトリックスに用いた場合はリューサイト含有量の増加につれて強さは低下した.また長石質ガラスの場合は強さに殆ど変化がみられなかった.しかし,ソーダ石灰ガラスを使用した場合はリューサイトを添加することによりガラス単独のものに比較して,強化されることがわかった.強さが向上した原因はリューサイト粒子がガラス相へ溶け込むことにより,リューサイト粒子とガラス相の界面が連続相となるためであると考えられた.