抄録
鋳造の短時間化を目的として,急速加熱型せっこう系埋没材が開発された.この埋没材で作製した鋳型は,埋没材の練和開始から30分後に700°Cの炉内に入れ,30分加熱するだけで鋳造できるものである.本研究では3種類の市販品について,膨張特性ならびに耐熱性との関連から鋳造クラウンの表面性状および適合性を調べた.練和した埋没材でブロックを作製し,練和開始から30分後に700°Cの炉内で急速加熱すると,従来型のクリストバライト埋没材は炉内に入れて間もなく粉々に破壊してしまったが,急速加熱型埋没材ではまったく破壊は生じないか,生じても小さなものであった.この試験で小さなクラックが生じた埋没材においてのみ,クラウンのマージンにわずかなバリが生じることがあったが,全般的にバリの発生は少なかった.鋳造体の表面あれにも大きな影響はみられなかった.急速加熱した際の熱膨張量には用いた3種類の埋没材間でほとんど差は認められなかったが,練和開始から30分後の硬化膨張は著しく異なっており,従来の鋳造法の場合と同様に,クラウンの良好な適合性を得るには加熱開始前の硬化膨張値が大きな埋没材ほど有効であることがわかった.