抄録
MMA-TBBレジンの接着においてエナメル質と象牙質を同時に処理できる処理剤の可能性について検討した.種々の濃度の銅塩及びリン酸からなる水溶液を調整し,MMA-TBBレジンを牛歯に接着する際の処理剤として使用した.歯質表面の形態的変化及び接着性を走査型電顕観察及び引張接着強度試験から処理剤の影響を検討した.リン酸及び銅塩の濃度は象牙質の接着強さに影響をおよぼした.3%の塩化第2銅を含む10%リン酸水溶液が象牙質の処理に最適と考えられ,リン酸のみの場合に比べて有意に接着強さが向上した.この処理剤はエナメル質にも有効であり,銅塩の添加は接着強さになんら影響をおよぼさなかった.したがってこの処理剤を用いることにより,エナメル質と象牙質を同時に有効に処理してMMA-TBBレジンを接着することができる.