抄録
サリチル酸の誘導体であるN-メタクリロイルアミノサリチル酸(NMSA)に着目し,その接着性ライナーとしての評価のみならず象牙質に対する知覚鈍麻作用についても検討した。その結果,5% NMSAアセトン溶液を調整しNMSAライナーとして用いると,牛象牙質に対する各種レジン材料の引っ張り接着強さが向上することが確認された。また象牙質知覚過敏症に対する本剤の塗布効果を臨床的に評価したところ,塗布直後においては,ほとんどすべての症例において症状の消退がみられ,臨床的に極めて効果的であることが示唆された。数日後にその効果の消退する例もみられたが,塗布面に対する10-3溶液による前処理の有効性も確認された。本剤の象牙質知覚過敏症に対する作用機序については現在検討中である。