抄録
数種の市販Ni-Cr合金の細胞毒性をマウス線維芽細胞(L929)を用いた培養法により検討した。細胞を合金試料と共に培養した後の細胞生存率とコロニー形成率を対照(ガラス)と比較することにより毒性を検定した。本実験で供試した合金は細胞の生存性とコロニー形成に対して一様に毒性を示したが,その程度は合金の種類によって異なっていた。標準のNi-Cr二元合金においては,その細胞毒性は合金からのNiの溶出量と密接に相関することが示された。細胞毒性,Niの溶出量は共に合金中のCr含量に依存しており,Cr含量が15%以下になると急激な細胞毒性の上昇が認められた。しかし市販のNi-Cr合金の場合,その細胞毒性の強さをNiの溶出性とCrの相対的な含量との関係のみに基づいて説明することはできなかった。この結果はCo, Cuといった合金中の他の成分の影響あるいは,Cr含有量に依存した合金組織内の不均一性によるものと推察された。