2006年の薬学部の6年制移行後,私立薬学部にとって,受験生の質と量の確保は難題である。私立薬学部の場合,「英語,化学,数学」の入試形式が標準のところ,薬学部志願者に敬遠される傾向の強い「数学」の比重を下げるほど受験者数が増えるため,競って「入試の脱数学化」を図っているが,逆に受験生の質確保に失敗する状況に陥っている。他方,「入試における数学の必須化」により,大学間の受験者獲得競争を避け,学力の高い学生を確保し,長期的に国試合格率向上を模索することで,大学のブランド力を高める動きもある。本研究は,私立薬学部入試の「脱数学化」と「数学必須化」を説明し,大学間競合度の観点から仮説検証を行った。