2020 年 29 巻 4 号 p. 152-161
マイクロチップは個体識別手段の一つであり,別離したコンパニオンアニマルと飼い主を再び引き合わせる点において,その有用性からさらなる普及が望まれる。しかし,マイクロチップを装着させるに至った飼い主の考えや意思の決定,また未導入の飼い主のマイクロチップへの考え方などは明らかになっていない。本研究は,計画的行動理論に基づくアンケート調査によって,マイクロチップに対する行動意図の予測因子を明らかにすることを目的とした。アンケート調査実施の結果,有効回答数は306件[飼い主47.4%(犬飼育者51.7%,猫飼育者42.1%,犬猫両方6.2%),非飼い主52.6%]が得られ,このうち導入済の飼い主は35人 (犬28.4%,猫8.8%))であった。計画的行動理論の項目において,非飼い主と比べ,飼い主は主観的規範の得点が有意に高かった。計画的行動理論によって,マイクロチップに対する考え方の相違や導入に対する行動意図を説明することができた。そして,マイクロチップの更なる普及に向けた中心的な存在は,改めて獣医師であることが示唆された。