抄録
日本では、社会システムの変化に伴い出産年齢は上昇し、糖尿病合併妊娠や妊娠糖尿病が増えている。糖尿病の母親の子宮内環境では、胎盤を介した高血糖状態が、過度なタンパク質の糖化反応による終末糖化産物(AGEs)の産生やその受容体を介した酸化ストレスや炎症を引き起こし、その結果、胎児の各臓器にインスリン抵抗性などのシグナル伝達障害をもたらすと考えられる。胎児期のシグナル伝達障害は、子どもの将来の疾患発症と深く関係することが明らかとなっている。実験モデル動物やモデル細胞を用いた我々の研究によって得られた、母体の糖代謝異常が胎仔に与える影響の分子機構の解明について最新の知見を紹介する。また、母体のインスリン抵抗性に対する薬物療法として、本邦ではインスリン以外の経口血糖降下薬の妊婦への使用は認められていないため、一次予防としての先制医療に繋がる機能性食品の探索研究の重要性についても論じる。