日本土壌肥料学雑誌
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那須扇状地の養水分動態に及ぼす伏流水と水田の影響 I. 水分動態
亀和田 國彦 中西 陽子齋藤 匡彦中澤 佳子
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2018 年 89 巻 2 号 p. 108-120

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抄録

栃木県北部の那珂川と箒川に挟まれた那須扇状地および周辺流域1,280 km2に面積1.2から341 km2の23流域を設定し,各単位流域末流における表流水の流下量を3年4ヶ月間測定した.また,タンクモデルを基本とする一般的な水分動態モデルに,本流域内の水循環を考慮する上で重要な,伏流水の移動および表流水との交換を組み込んだモデルを構築した.

(1)モデルによる表流水流下量の計算値は,流域内河川23地点で実測した表流水流下量の季節変動をよく表した.各調査地点に対応する個々の単位流域における水収支のモデル計算値から,伏流水の移動および表流水との交換を組み込んだことによって,表流水流下量のモデル推定がうまくいったことが示された.

(2)モデルにより,降水量と蒸発散量の差の年間積算値1,150 mmy−1に対し,調査全流域では678 mmy−1が伏流水を形成すると計算された.蛇尾川,熊川,箒川本流の北部山間地域から扇頂域で伏流水への流出が多く,扇状地上流域の標高250から350 mに貯留帯が形成されている.湯坂川,百村川,蕪中川,深川および巻川等の扇央から扇端に位置する流域で伏流水の流入が多い.山間地域から扇頂域で形成した伏流水は,扇央から扇端域に流入したものと推測され,伏流水の水循環への影響が大きい.

(3)モデル計算の結果,那珂川と箒川に挟まれた那須扇状地の伏流水流出量848 mmy−1は,流入量1,630 mmy−1に比べて大幅に少なかった.このモデル計算結果は,同流域内の地形等に関する既往調査結果から発生しにくいと推測される高久丘陵からの那珂川を越える伏流水の移動が起こっていることを示唆する.今後の検証が必要である.

(4)那須扇状地の水田かんがいのための地下水利用量は流域面積当たり725 mmy−1で,降水量と蒸発散量の差の72%,伏流水流入量の44%に相当し,水田は地域内水分動態に大きな影響を及ぼしていると推測された.

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© 2018 一般社団法人日本土壌肥料学会
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