秋まきコムギ生産性を土壌質の観点から定量的に評価するため,北海道十勝地域の生産者圃場(3か年のべ61筆)の表層土壌理化学性データを用いて,土壌質指標(soil quality index: SQI)の算出を試みた.まず,北海道が土壌診断基準値を設けている項目から圃場間の変動が大きいものを採用し,次いで0~1のスコアに換算し,加重合計をSQIとした.スコアは基準値から離れるほど減点した.採用された項目は,圃場間変動が大きい順に交換性カルシウム,固相率,交換性カリウム,粗孔隙,熱水可溶性ホウ素であり,特に交換性カルシウムと粗孔隙がSQI低下に与える影響が大きかった.SQIと収量の関係として,5~7月が多雨で低収な2018年のみ有意な正の相関が見られ,低地土(表層が火山灰のものも含む)で特に相関関係は強く,粗孔隙のスコアがSQIに大きく影響した.一方,低地土に比べて有効土層が厚い黒ボク土のSQIと収量の相関関係は弱く,表層に礫混入が多い圃場は高SQIでも低収であった.このことから有効土層全体の評価,礫の考慮,それらの指標化の必要性が示唆された.本研究では,多雨で低収な年かつ有効土層が薄く表層に礫混入が少ない圃場に限りSQIと収量に関係が認められ,土壌質の改善が収量の年次変動を低減しうることを示した.また,SQIと収量の関係は気象条件,栽培管理状態も考慮する必要があることを示した.