日本土壌肥料学雑誌
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水稲「ハツシモ岐阜SL」における湿潤土湛水培養による窒素無機化量を加味した適正な施肥窒素量の算出方法
和田 巽 棚橋 寿彦
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2022 年 93 巻 4 号 p. 176-184

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抄録

岐阜県平坦部の水稲主要品種「ハツシモ岐阜SL」の安定生産と良好な品質の両立に向けて,土壌からの窒素供給を加味した施肥窒素量(以下,施肥N)の適正化について検討した.

玄米収量および玄米タンパク質含量と成熟期における窒素吸収量との間には一定の関係が認められ,これらの関係から「ハツシモ岐阜SL」における理想的な窒素吸収量を100 kg ha−1と位置付けた.

水稲作物体への窒素供給量と窒素吸収量との関係を調べ,施肥Nに作土からの窒素供給量(以下,作土N)を加味することで,施肥Nのみの場合に比べ窒素吸収量との関係性は強まった.特に,湿潤土30°C 10週間湛水培養による窒素無機化量(以下,湿10w)により作土Nを算出し,土地利用形態により水稲連作と田畑輪換に仕分けすることでこれらの関係性はさらに強まった.すなわち,湿10wを窒素供給量に加味することで,施肥および作土由来の窒素供給量から窒素吸収量を精度良く推定できることが示唆された.

これに加え,供給窒素の利用率と施肥Nおよび作土N以外の供給窒素を推定式に加味した結果,窒素吸収量の推定精度はさらに向上した.作土Nの利用率と作土Nの算出に用いる作土の仮比重および作土深を係数化し,推定に必要な要素を湿10wの値のみとした推定式と「ハツシモ岐阜SL」の理想的な窒素吸収量から,湿10wを加味した適正な施肥Nの算出方法を構築した.

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© 2022 一般社団法人日本土壌肥料学会
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