2023 年 94 巻 3 号 p. 163-169
愛知県の露地野菜畑では,作物のカリウム(K)吸収量がK施肥量を上回る事例が報告されており,土壌中の交換性Kに加え,熱硝酸抽出法などで評価される鉱物に含まれるK(非交換態K)を吸収している可能性がある.そこで,愛知県の主要露地野菜畑における非交換態K量の規定要因および作物K吸収への寄与を検討した.愛知県露地野菜畑の非交換態K量は全国平均よりも多い傾向であり,特に非交換態K量が多い地域では母材が主に花崗岩類であった.鉱物組成を分析した結果,非交換態Kは粘土画分の雲母鉱物ではなく,砂画分・シルト画分を含んだ2 mm以下の雲母鉱物と正の相関関係を示しており,砂画分・シルト画分の粗粒な雲母鉱物が非交換態K量に寄与していることが示された.粗粒画分の雲母鉱物および非交換態K量が多い土壌の8割以上で,K飽和度が土壌診断基準の下限値(6.0–6.4%)を下回ったものの,作物が多量にKを吸収していた.以上より,非交換態KがK供給源として寄与した結果,K飽和度が土壌診断基準以下でも十分にK吸収量を確保できる可能性が考えられる.