抄録
慢性呼吸器疾患の存在下, 高濃度酸素を呼吸することにより, 呼吸中枢の抑制がおこり, 血液中CO2濃度が増加し, 呼吸性アシドーシスを示し, 意識障害の出現を特徴とするCO2ナルコーシスを示した2症例を経験した.第1例は60歳男, 8年来慢性肺性心を示していたが, 呼吸器感染により呼吸困難出現, 酸素テソトに収容した.50%02呼吸6時間後, 昏眠出現.このときのPaO272, PaCO275mmHg, 血液pH7.34であった.第2例は70歳女, 6~7年来肺気腫.呼吸器感染で呼吸困難出現し, 酸素テントに収容した.50%O2呼吸22時間後, 傾眠状態出現.PaO268, PaCO296mmHg, 血液pH7.33.上記2症例とも酸素テントより出し, 強制的に深呼吸させることにより意識および血液ガス, 血液pHの急速な改善をみた.これらのことは, 生体環境条件としての大気組成が, いかに生体Homeostasisの維持に関与しているかを示唆する.