抄録
大気中に含まれている二酸化イオウ (SO2) の光合成・蒸散などに対する影響, すなわち非可視的効果をしらべるため, ヒマワリ幼植物をチャンバーに入れ, SO2を含む空気を通気して, SO2濃度・光合成速度・蒸散速度・比較湿度を同時測定し, SO2接触による光合成・蒸散速度の変化を追求した.
SO2接触9時間, 濃度1ppmまでの実験では, SO2濃度が高くなるにしたがい, 光合成・蒸散阻害率は増大した.SO2接触後光合成の低下は蒸散のそれより先行し, 気孔の閉じないうちすでに光合成が抑制されていることが暗示された.SO2除去後は光合成も蒸散も同様に回復したが, 高濃度のSO2に接触後は両者とも回復がおくれた.SO2接触時の湿度や光量は光合成阻害率にあまり大きな影響を及ぼさなかったが, 被陰処理して葉が陰葉化した幼植物では, 対照と比較してSO2の各濃度で光合成阻害率は高かった.さいごに長期間にわたるSO2の接触の影響をみるため, 毎日3時間ずつ0.3~0.5ppmのSO2を幼植物に反覆接触させると, 毎日SO2除去後光合成速度はすぐ増大したが, 接触回数を重ねるとともに, 翌日の光合成は低下した.また8日間SO2に接触させた個体に, あらたにSO2を接触させると, そのときの光合成阻害率は対照と差はなかったが, ふつうの大気中の光合成速度は小さくなっており, 反覆接触の後作用が認められた.