生物環境調節
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環境要因による植物ウイルス増殖の制御
平井 篤造井上 潤管野 善廣大林 茂松林 茂隆
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1976 年 14 巻 2 号 p. 33-39

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抄録
タバコモザイクウイルス (TMV) に抵抗性のトマト品種瑞光 (ZK) および罹病性の福寿2号 (F2) を主として用い, ウイルス接種後20, 25, 32℃に置くと, 25℃で強抵抗性のZKは20℃ではウイルス濃度がF2の60%まで増加し, 罹病性に変換した.つまりZKの抵抗性は温度依存性である.45℃・10分の乾熱衝撃を接種直後のトマトに施すと, ZKではウイルス増殖が無処理に比べてさらに抑制され抵抗性が増進したが, 同じ抵抗性のものでも遺伝子組成の異なる他の系統ではその効果はなかった.螢光色素であるアクリジン橙 (AO) の10ppm液で接種したトマトを水耕すると, ZKおよび他の抵抗性系統でもウイルス増殖がさらに抑制され抵抗性が増高したが, 罹病性のF2ではその効果はなかった.AO処理の健全ZK汁液を試験管内でウイルスに加えても, ウイルスは不活化せず, AOは直接ウイルスに作用するものでないことを示した.TMV感染のF2汁液を接種F2に吸収させると, ウイルスの増殖は抑制され抵抗性が誘導されたが, 感染ZKの汁液をF2に吸収させるか, あるいは感染F2の汁液をZKに吸収させても, ウイルス増殖度に大きな変化はなく, 感染汁液の抵抗性誘導に特異性があることを示した.
以上の事実から, 物理・化学的環境要因によるトマトでのTMV増殖の制御機構について考察した.
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© 日本生物環境工学会
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