生物環境調節
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画像処理による植物生育の電算機制御
IV.植物の活力評価のための光波長別レフレクタンスによるデジタル画像処理
江口 弘美濱古賀 道男松井 健
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1979 年 17 巻 2 号 p. 67-77

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抄録
植物の生育環境を最適化するための電算機制御系においては, 植物生育の状態をフィードバック情報として用いる必要があるが, 本報では光波長別レフレクタンスによるキュウリ植物の画像処理を行い, 植物の活力に関する評価方法の確立を試みた.まず健全葉および諸状態の障害葉のスペクトラルレフレクタンスを解析した結果, そのスペクトラムは650~690nm (R) および800~1000nm (I) の波長域のレフレクタンス (γRおよびγI) によって特徴づけられ, それらの比 (γIR) によって最も顕著に評価されうることがわかった.
そこで, 670nmと900nmにそれぞれの透過ピークをもつ2種の干渉フィルター系を用いてR画像およびI画像を撮り, それぞれ240×256メッシュ (6 bit/W) にデジタル化してマトリックスとした.これらのデジタルディスプレイにおいても諸状態の葉の特徴が認められたが, さらに生理的および病理的な特徴を抽出するために, 式 (2) および (3) を用いてR画像およびI画像におけるレフレクタンスの比 (Br) を算出した.この方法では, カメラセンサーのスペクトル感度, 照射光のスペクトル組成およびフィルターの透過光量によってシステムの係数Kが定まることから, 自然光下など異なる光条件下においてもBrの基準化が可能となった.このBrを用いることによってカメラ, 葉, 照射光のそれぞれの角度による反射光強度の変動 (鏡面反射などの反射光強度の角度特性による変動) , およびカメラシステムにおけるシェーディングによる誤差をほぼ無視できる程度にまで減少させることができ, 葉のスペクトル反射特性を評価することが可能となった.
諸状態の葉を用いてBrを比較した結果, 健全葉と障害葉には明瞭な差が認められたので, Brを用いた識別法の確立を試みた.すなわち, 健全葉におけるBrの度数分布が近似的に正規分布とみなせることから, すべての健全葉の99%を含むBr範囲として7.6≦Br≦12.7を得た.一方, ほとんどの障害葉のBrが7.6≦Br≦12.7を満足しないことから, Br=7.6およびBr=12.7を健全葉と障害葉との識別のためのclassifierとして用いられうることがわかった.以上のように光波長別レフレクタンス画像処理から得たBrは生育環境最適化のためのフィードバック情報の一つとして有効であることが明らかとなった.
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© 日本生物環境工学会
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