抄録
植物個体群内の微細環境は種々の環境要素と植物の生理機作によって支配されている.とくに植物個体群内の湿度分布に対する気流の作用は複雑であり, その解明は生物環境制御における重要な課題の一つである.本研究では, キュウリ植物個体群内の湿度分布に対する気流の作用を解明するとともに, 植物生育を指標として, 環境制御における気流について考察した.植物個体群内の湿度は光照射および地表面からの蒸発によって高められたが, 湿度分布はとくに気流速度と気流方向によって著しく影響された.横方向気流において, 植物個体群内の湿度分布をほぼ均一にするためには0.9m sec-1以上の気流速度が必要であった.しかし, 植物生育に対する最適気流速度は約0.5m sec-1であることから, 気流速度の増加によって湿度分布を均一することは困難であり, したがって, 低気流速度で均一な湿度分布を得るための適切な気流設計が望まれる.そこで上方向気流, 横方向気流, 下方向気流の制御環境下 (気流速度0.2m sec-1) で植物個体群内の湿度分布を調べた結果, 水平面での湿度勾配は下方向気流において著しく小であり, また, 植物の生育も下方向気流においてもっとも均一であることがわかった.このことは, 各植物個体が下方向気流においてもっとも均一な環境に暴露されていることを示している.以上の結果から, 均一な植物個体群を得るための環境制御には下方向気流が適していることが明らかとなった.