生物環境調節
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施設栽培バラ葉におけるクロロシス発生とリン酸の過剰施用について
大橋 恭一熊谷 健吉川 雅造
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1984 年 22 巻 2-3 号 p. 47-52

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抄録

近年, 施設栽培のバラ葉にクロロシスが多発し, 切花の商品価値の低下が認められる.滋賀県下の施設栽培バラ園5カ所を対象にし, クロロシス発生と土壌理化学性および葉分析との関係について調査し, 下記の結果を得た.
1.バラ園作土の置換性カルシウム (CaO) は133~294mg/100g乾土, マグネシウム (MgO) は24.9~53.9mg/100g乾土, カリ (K2O) は24.3~89.4mg/100g乾土, マンガン (Mn) は0.8~9.7ppmであった.可給態鉄 (Fe) は2.7~5.1ppmと少なく, 可給態リン酸 (P2O5) は144~332mg/100g乾土ときわめて多量含まれていた.
2.クロロシス発生株と正常株の株元土壌分析結果では, クロロシス発生の有無と土壌養分含有量との関係は認められなかったが, いずれの場合にも可給態リン酸はきわめて多かった.
3.クロロシスの程度を葉中クロロフィル含量で表わし, 葉中リン含有率との相関を求めたところ1%水準で有意な負の相関が得られ, 葉中リン含有率が高いため鉄欠乏を呈したと考えられた.そこで葉中のリン含有率および鉄含有率とクロロシス発生との関係を求めたところ, 葉中鉄含有率が60ppm以下の場合とリン含有率が0.45%以上の場合にクロロシス発生が認められた.
これらの調査結果から施設栽培バラ葉におけるクロロシス発生には単純な鉄欠乏によるもの以外に, リンの過剰吸収に起因する別の鉄欠乏によるものの存在することが推察された.

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© 日本生物環境工学会
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