抄録
ナス種子の発芽力は, 貯蔵開始前の温度および近赤外光 (730nm) 処理によって著しく異なる.
吸水後, 暗黒・高温 (35℃) あるいは25℃そして35℃の温度下で近赤外光処理した種子は, 暗黒・25℃で処理した種子および無処理種子に比較して発芽力の低下が明らかに少ない.
発芽を抑制する高温 (35℃) , あるいは35℃のみならず25℃の温度下で近赤外光処理された種子は, それぞれ温度および光による二次休眠が誘導され発芽力が長く保持されたが, 発芽適温域の25℃・暗黒処理種子および無処理種子は, 二次休眠が誘導されずに発芽力の低下が進んだものと考えられる.種子の発芽力は, 貯蔵期間中の水分, 温度, 酸素濃度などによって著しく影響されるが, 高温あるいは近赤外光処理によっておこる種子の生理的状態によっても大きな影響をうけることは明らかであり, ナス種子の発芽能力の保持には, 高温 (35℃) , 近赤外光処理が有効である.