抄録
本研究は, 今後植物工場, 管理・収穫ロボット等に必要となる視覚センサの開発を目的として, キュウリを対象物とし, 種々の器官, 背景等が混在する画像中の果実の識別および認識実験を行った.まず, 識別実験では, 果実と茎葉の識別に適する波長帯域に透過率を有する2枚の干渉フィルタを用いて画像入力し, その濃度値を演算することにより, 2値画像を作成した.次に, その2値画像における塊状図形および線図形の特徴を生かした認識アルゴリズムの検討を行い, 次のような結果を得た.
1.550nmと850nmの干渉フィルタを利用することで果実と茎葉はほぼ識別可能であったが, 葉の表の色が濃い場合, 果実が黄緑色に近い場合, および果実が鏡面反射している場合等には, 2値画像上で識別困難となることがあった.
2.果実が鏡面反射している場合には, 850nmのフィルタを用いて入力した画像から濃度値の高い画素を利用することにより, 補正することが可能であった.
3.塊状図形の特徴量として, 面積, フェレ長比, 水平方向切片長を, 線図形の特徴量として, 長さ, 方向を複合して利用することにより, 果実はほぼ認識可能となった.
4.線図形における画素列の方向を考慮することにより, 分断された果実を結合することが可能で, 認識がいっそう正確かつ容易となった.
本研究の一部は, 科学研究費, 試験研究B (課題番号04556036) の交付を受けた.ここに記して関係各位に感謝の意を表します.