水ストレスがモモの果実品質に及ぼす影響を検討するとともに, 成熟期の果実内ABA含量の変化についても調査した.1994年にモモ‘白鳳’7年生成木を用い, 屋根掛けと透湿シートマルチによる水ストレス処理を6月20日 (満開後70日目) から収穫までおこなったところ, 7月9日以降, 対照区と比べて明らかに強い水ストレスを得た.その結果, 果実のABA含量と糖度が増加したが, 果実重と着色には影響がなかった.1995年にも果実成熟期に同様の乾燥処理をおこない, 果実のABA含量と糖度の増加が認められた.1994年には収穫果のABA含量が, 成熟期のモモに好適とされている-0.06MPa以下の土壌水ポテンシャル (2.8以上のpF) で急増した.また, 果実成熟期の水ストレスはモモの葉の光合成速度を低下させた.これらの結果から, 果実成熟期の水ストレスはモモの乾物生産を減少させるが, 果実のABA含量を増加させることによって, 果実への同化産物の分配を促進し, それによって果実の糖度を高めることが推察された.