タイ国半島部ナラチワ県の熱帯泥炭湿地林地帯において原生林および伐採後に成立した二次林の樹冠上でCO2フラックスを観測した.フラックス測定は濃度傾度法および定速渦累積法を併用し, 1995年8月から1996年7月の期間における正味炭素吸収量を推定した.原生林, 二次林それぞれの正味炭素吸収量は5.32tCha-1year-1および5.22tCha-1year-1であった.原生林で正味に炭素吸収が行われている原因は, 落枝, 落葉, 倒木等が湛水下に泥炭として蓄積され分解が遅れるためと推察された.二次林における正味の炭素吸収は, 植物の成長によるものであると考えられた.また, 二次林において, 湛水を通年維持した場合には9.69tCha-1year-1, 排水を徹底し土壌を通年乾燥状態に維持した場合は-0.40tCha-1year-1 (正味の放出) と推定された.