生物環境調節
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CAM植物におけるPEPカルボキシラーゼのin vivo特性
―パインアップルのCAMはPEPCのリン酸化で制御される?―
アフメド シャヒーン野瀬 昭博和佐野 喜久夫
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2002 年 40 巻 4 号 p. 343-354

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抄録
2種類のCAM植物; セイロンベンケイソウ (Kalancho隘 pinnata) とパインアップル (Ananascomosus (L.) Merr. cv. Smooth cayenne N67-10) の葉から昼間と夜間に2分以内で抽出したホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ (PEPC, EC4.1.1.31) について, リンゴ酸による阻害の検討を行った.パインアップルのPEPCではリン酸化が生じていないと考えられた.また, 見かけのキネテック特性や分子量, 特にPEPCサブユニット構成は2種類のCAM植物で異なっていた.セイロンベンケイソウのPEPCでは2種類のサブユニット (多量ポリペプチド112kDaと微量ポリペプチド119kDa) が昼夜ともに観察された.かし, パインアップルのPEPCでは単一のポリペプチド (見かけの分子量は107kDa) のみが観察された.ウエスタンブロット解析でも同様の結果が確認された.両植物から抽出した各々のPEPCサブユニットのN末端領域の保存状態についても, N末端抗体を用いたウエスタン解析で確認された.セイロンベンケイソウのPEPCはリンゴ酸感受性が13%減少したことより明らかにリン酸化された状態が示唆されたが, パインアップルでは夜間においてもリンゴ酸感受性があまり減少しない (相対活性が79%の低下) , すなわち高い活性阻害が生じる状態を維持した.in vivo状態の見かけのKi (malate) は, セイロンベンケイソウでは昼型 (0.9mM) にくらべ夜型 (5.8 mM) で6.4倍高かったが, パインアップルでは昼型と夜型ではそれぞれ1.0 mMと0.5 mMであった.以上の結果は, パインアップルのPEPCにおいてはリン酸化が必ずしも活性制御の主因ではないことを示唆している.
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© 日本生物環境工学会
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