生物環境調節
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異なる温度環境で生育したブドウ‘巨峰’果実における着色制御機構
森 健太郎菅谷 純子弦間 洋
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2004 年 42 巻 1 号 p. 21-30

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抄録
ブドウ‘巨峰’果実は高温条件下で生育すると着色不良となることが知られている.高温条件下におけるアントシアニン生合成の制御機構を解明するため, 異なる温度条件で生育した果実を用い, フラボノイド含量, アントシアニン代謝, 関連酵素活性, 光合成産物の転流・分配を調査した.昼夜30℃一定条件で生育した果実では, 昼夜25℃一定, 昼温30℃/夜温15℃で生育した果実と比べ, 果皮中アントシアニン含量が著しく低下した.同様に, アントシアニンの前駆体であるフェニルアラニンも30℃で生育した果実で蓄積量が劣っており, 果実への光合成産物の転流量も減少した.フェニルアラニンアンモニアリアーゼ (PAL) 活性は25℃で生育した果実で高かったが, UDPグルコースフラボノイド3-O-グルコシルトランスフェラーゼ (UFGT) 活性は低夜温の30/15℃で生育した果実で高かった.以上の結果から, 高温条件下で生育した‘巨峰’果実では, 光合成産物の分配の減少, 果皮中のフェニルアラニン蓄積不足, およびUFGT活性の著しい低下によってアントシアニン生合成が阻害されることが示唆された.
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© 日本生物環境工学会
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