抄録
北海道農業試験場ファイトトロンの人工照明室の環境条件と, これが作物の生育に及ぼす影響を大豆を用いて解析した.
吹出し方式は全壁面吹出しで対向比1である.この方式のもとでの室内の風速, 温度分布は, 室内に作物の生育していない標準状態ではきわめて良好である.生育状態時では, 草丈の低い場合, 吹出し口からの距離が遠いほど, 植物周囲温度が上昇する.草丈の大きいときは, 吹出し口際より, 植物周囲温度が設定室温より1~2℃高くなる.この温度上昇は, 風速が吹出し口で196cm/sec, 植物周辺で10cm/sec前後と少ないことに起因している.
生育の場所によるむらはかなり大きく, 草丈の最高は最低のほぼ3倍であった.条件の良い場所は生育が良く, 草丈が伸びてより光源に近くなるため, ますます生育が旺盛になる.これが草丈差を一層拡大したものと思われる.
人工照明室, 自然光室, 戸外の3条件下で生育比較試験を行なった結果, 収量ならびにその構成要素, 乾物生産量などからみて, 人工照明室は3者のほぼ中間的位置にあり, 発芽より成熟までの全生育過程を順調に経過せしめることができた.