抄録
ビニールハウスで二重・三重被覆をした場合の保温効果について, 円筒モデルハウスについて測定を行ない, 熱輻射を加えた理論式によって熱貫流・放熱係数などを検討した.
1) .ハウス内温ti気温taに比例し, 加熱量・有効放射・フィルム層数カミー定なら下式で定ti=ta+c (cは定数)
2) (ti-ta) は加熱量を増せば大きくなるが, 勾配は漸減する.したがって, 加熱量を倍にしても△tは倍には達しない.
3) (ti-ta) は有効放射が増すと急減する.加熱量の少ない場合にはほぼ直線的であるが, 加熱量の多い場合には勾配がしだいに急になる.したがって, 加熱必要時にわずかな有効放射の増加が大きく影響し, 設計上, 有効放射の定め方が問題になる.
4) フィルムからの熱輻射が大きいので, 内外温度差によって熱貫流量を表わそうとすると, みかけ上, 負の熱貫流量・熱貫流率が見出される.
5) 多重被覆では一般に一重の場合もふくめて, 最外層フィルムはほぼ一定温度であり, これが冷たい天空 (-27℃) に代って, 暖かい人工天空 (-2℃) を形成することが内気温を高める主因となっている。
6) 概して二重被覆の保温効果 (放熱係数の逆数) は2倍, 三重では約4倍である.