応用生態工学
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原著論文
大気暴露が人工水路の付着藻類群集に及ぼす影響
福嶋 悟皆川 朋子
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2007 年 10 巻 2 号 p. 155-162

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抄録

人工水路に設置した基質に生育した珪藻類のMelosira variansが優占する付着藻類群集を水路の外に移動し,大気暴露がクロロフィルaとして測定された現存量に及ぼす影響について検討した.晴天下で5時間大気暴露した群集と,24時間あるいは48時間大気暴露した群集の現存量の最大減少率に相違はなく,5時間の大気暴露でも藻類は明瞭に減少した.晴天下で5時間大気に暴露した群集の現存量は,水路に戻してから7日間の実験期間を通して大気暴露前に比べて少ない状態が維持された.それに対して,河床材料が移動しない規模のフラッシュ放流を受けた群集では3日後の現存量は減少したが,7日後にはフラッシュ放流前より多くなった.大気暴露後の藻類現存量コントロールの効果が長く持続したのは,大気暴露により乾燥して基質に固着した生物膜が,水中で徐々に剥離するためであることが無機物量の変化から明らかにされた.曇天下で5時間大気に暴露した群集では,暴露前と暴露後の7日間を通して現存量の変化はほとんどなかった.晴天下と雲天下における藻類現存量の変化の相違から,大気暴露時の天候により現存量コントロールの効果が明瞭に異なることが示された.

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© 2007 応用生態工学会
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