応用生態工学
Online ISSN : 1882-5974
Print ISSN : 1344-3755
ISSN-L : 1344-3755
事例研究
大石ダムが下流河川の底生動物群集(特に造網型トビケラ類)に及ぼす影響
松井 明
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 11 巻 2 号 p. 175-182

詳細
抄録
本研究は,新潟県岩船郡関川村に位置する大石ダムを有する大石川において,1994年4~12月にダムの下流河川および上流河川における底生動物群集を調査し,ダムが下流河川に生息する底生動物群集に及ぼす影響およびその要因を検討した.その結果,以下のことが明らかになった.
1.ダム上流の底生動物群集の現存量は,カゲロウ目およびカワゲラ目が優占したのに対し,ダム下流ではトビケラ目が優占し,特に造網型トビケラ類のヒゲナガカワトビケラおよびチャバネヒゲナガカワトビケラの現存量が大きかった.
2.ダム下流地点では,造網型のヒゲナガカワトビケラ,チャバネヒゲナガカワトビケラ,シマトビケラ科のいずれもが,上流地点と比較して生息密度が大きかった.
3.ダム放流水口直下の地点では,夏季に河川水中の浮遊態有機物濃度の増加が観察され,これはダム湖からの植物プランクトンの流下によるものと推察された.また,この地点では夏季にヒゲナガカワトビケラ属若齢幼虫の顕著な増加が確認された.
4.ダム湖から供給される植物プランクトンは,ダム下流域のヒゲナガカワトビケラ属の個体群に正の影響をもたらしている可能性がある.
著者関連情報
© 2008 応用生態工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top