応用生態工学
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原著論文
コンクリート三面張り水田小排水路における植物侵入の実態分析
植村 碧谷口 智之河野 賢佐藤 政良
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2008 年 11 巻 2 号 p. 161-174

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抄録
茨城県常総市報恩寺地区において,2004年から2006年の3年間,小排水路内植生に関する調査を行った.小排水路への植生侵入現象,植生侵入を規定する条件について考察した結果,以下の事が明らかになった.
1.小排水路の3年間の植生分布をみると,群落の形成地点は安定しており,優占種,出現種にも大きな変化は見られなかった.また植生は小排水路内の上流部に多く,地区全体でも,支線排水路から離れた地点に植生が分布していた.
2.2本の小排水路で植生があった地点すべてについて,水深,土砂堆積厚と植生の関係を測定した.その結果,多くの種が水深10cm以下に分布していた.植生を種ごとに見ると,水深と土砂堆積厚の特定の組み合わせ領域におおよそまとまって分布していた.
3.水深,土砂堆積厚の組み合わせ条件に対する植生の平均被度をみると,平均被度の高い階級の土砂堆積厚は小排水路によって異なっていた.一方,水深に関しては15cm以下に平均被度の高い範囲があった.植生侵入には水深が規定的に影響していると推測された.
4.植生侵入可能と思われる条件で植生が無い地点は,水深以外の要因が植生侵入を抑制していると考えられる.そこで,植生侵入に影響を及ぼす要因の一つとして考えられる埋土種子の有無を把握するため,小排水路と水田の土砂を採取し発芽試験に供した.その結果,植生侵入不可能と思われる条件で植生が無い地点でも,他の地点と比べ発芽本数が少ないわけではなく,水深の条件が植生侵入を制限していることが推測された.
5.本地区では,2本の小排水路から導かれた水深が規定的であるという法則性によって,地区全体の植生の分布を理解できる.
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© 2008 応用生態工学会
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