抄録
深泥池水生生物研究会が行っている外来魚駆除事業の継続的実施によって, 深泥池における2005年のブルーギルの個体数は駆除事業開始時の1998年に比べておよそ10分の1まで減少した. この人為的な個体群抑制が, 深泥池ブルーギル個体群の遺伝的構造に及ぼす効果を見積もるために, マイクロサテライト座位BG6Xの多型 (CA繰返し数多型) を指標として, その対立遺伝子構成を2006年の試料と2007年の試料とを用いて比較解析した. その結果, 2007年の試料では, 遺伝子型頻度がハーディー・ワインバーグ平衡からずれていた. さらに, 集団内対立遺伝子数の期待値 (Allelic richness) は, 2006年から2007年にかけて顕著な減少傾向を示した. これらのことは, 試料個体が生まれたと推定される期間に行われた産卵床の破壊が, 個体群の繁殖阻止に加えて対立遺伝子構成にも大きく影響を及ぼしていることを示唆する.