応用生態工学
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原著論文
物理環境による河川環境診断 (II)
―河川生物群集による診断結果の検証―
樋村 正雄西 浩司中村 太士川口 究鳥居 高明竹内 洋子西川 正敏五道 仁実楯 慎一郎黒崎 靖介村上 まり恵
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2010 年 13 巻 1 号 p. 9-23

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抄録
本研究では, 標津川中流部におけるリファレンスからの乖離度を用いた物理環境による河川環境診断 (RHS-M)結果の妥当性を, 河川生物の生息状況から検証した. 北海道東部を流れる標津川中流部の16サイトで魚類, 底生動物, 陸上植物, 鳥類の定量調査を実施した. 生物の調査結果は, 1) 原始標津川中流部における典型的な種群の出現状況, 2) 各サイトの生物群集の組成の2つの視点で, 河川環境診断結果との関係を解析した. 生物群集の組成は, 各生物群について16サイトにおける出現状況を除歪対応分析により序列化することで解析した. 魚類, 陸上植物の典型的な種群の生息量は, 河川環境診断において良好と判断されたサイトで多く, 悪化していると判断されたサイトでは少ない傾向がみられた. 魚類, 底生動物, 陸上植物群集では, 序列化第1軸が人為改変によって生じる群集変化を示しており, リファレンスからの乖離度および多くの物理環境変数と相関関係がみられた. 鳥類群集では序列化軸とリファレンスからの乖離度に関係はみられず, 相関関係がみられる物理環境変数もほとんど無かった. これらの結果から, 乖離度による河川環境診断結果は生物の出現状況や群集の組成と概ね対応しており, 乖離度は河川の総合的な環境診断に有効な指標であると考えられる.
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© 2010 応用生態工学会
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