応用生態工学
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事例研究
魚類の生息環境の改善を目的とした河川修復事業の長期的効果
下田 和孝神力 義仁川村 洋司佐藤 弘和長坂 晶子長坂 有
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2011 年 14 巻 2 号 p. 123-137

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抄録
魚類の生息環境の改善を目的に 1996 年に実施された積丹川の再改修事業を対象に,2007 年から 2009 年にかけて魚類の生息密度,河川の物理環境,サクラマスの産卵床分布および河川水温を調査し,完成から 10 年以上経過した後の効果を検討した.現在の改良区の物理環境は,水深が深く低流速で河畔植生によるカバー率が高いという特徴を有していた.一方,改良区の間に残された対照区の多くは浅く開けた瀬であった.改良区はサクラマスの産卵環境としては水深が深く礫サイズが大きい傾向があり,再改修事業の完成直後と比べ産卵床数は減少していた.サクラマスの幼魚は成長段階や季節に応じて改良区と対照区の双方を利用し,両区ともにサクラマス幼魚にとって重要な生活場所となっていた.また,改良区はサクラマスやアメマスの親魚およびウグイ属魚類の生息場として活用されていた.盛夏季における河川水温の温度勾配は再改修を実施した区域を境に緩やかになり,サクラマス幼魚の成長停滞が起こるとされる水温 24 ℃に達することはなくなっていた.これには河畔に植栽された樹木が繁茂し直射日光を遮断していることと,施工時に流路が狭窄化されたこととが関係していると考えられた.
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© 2011 応用生態工学会
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