応用生態工学
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事例研究
洪水により発生した倒流木と巨石を用いた河川再生工法の評価
高山 裕將柳井 清治白川 北斗
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2011 年 14 巻 2 号 p. 139-154

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抄録
荒廃渓流であった北海道北部パンケオロピリカイ川に設置された構造物において,施工後の地形変化・構造物の機能及び耐久性・魚類生息環境について評価を行った.1998 年災害後に発生した倒流木と転石を用いて 3 タイプの構造物 (ログダム,デブリキャッチャー,巨石床固工) が設置され,施工後 8 年を経過して多様な環境が作り出されていた.施工区では落ち込み淵の増加がみられ,流速は緩急に富み,底質も多様な礫径分布となっていた.ほとんどの構造物では木材の腐朽は見られず,8 年以上構造物は維持されていた.魚類調査の結果,2004 年 6 月と 10 月のログダム区において対照区より著しく多いサクラマス幼魚とハナカジカが,10 月のデブリキャッチャー区において対照区より著しく多いサクラマス幼魚が捕獲された.ログダム直下の淵やデブリキャッチャーが捕捉した流木のカバーはサクラマスに,ログダム上流に形成された瀬はハナカジカに効果があったと考えられる.以上のことから,現地発生の倒流木と巨石を用いた構造物は多様な生息場を創出しながら防災機能を発揮しており,今後健全な河川環境を回復させるための工法の一つになると考えられる.
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© 2011 応用生態工学会
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