応用生態工学
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原著論文
吉野川におけるオオヨシノボリ個体群の遺伝的分化および陸封化
高木 基裕柴川 涼平清水 孝昭大森 浩二井上 幹生
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2013 年 16 巻 1 号 p. 13-22

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抄録
河川人工構造物は,水生生物個体群の分断化を引き起こす.本研究では,複数の貯水ダムが設置されている吉野川においてオオヨシノボリの遺伝的集団構造の解析および回遊履歴の判定を行い,ダムによる分断の程度を評価することを目的とした.吉野川の大橋ダム上流および下流の 6 地点からオオヨシノボリを 31~50 個体採集し,各個体の胸鰭から DNA を抽出した.マイクロサテライト領域の増幅には Rhi-5-7-11 の 3 種のマーカー座を用い,アリルサイズを決定し遺伝的解析に用いた.耳石による回遊履歴の判定は吉野川下流域から支流の鮎喰川,穴吹川,貞光川,上流域から大橋ダム上流の長沢,長沢ダム上流の越裏門,大森川ダム上流の奥南からそれぞれオオヨシノボリを 1 から 3 個体の耳石を採取し,Sr/Ca 濃度を測定した.遺伝的多様性を示す有効アリル数の平均値は,鮎喰川および貞光川で最も高く(15. 7,15. 9),ダム上流域の個体群で低かった(10. 9~13. 0).一方,ヘテロ接合体率(期待値)の平均値は竹野川(0. 788)を除きダム上流域と下流域で同等の値を示した(0. 870~0. 890).遺伝的異質性検定では,大橋ダムの上流域と下流域の個体群間において有意な差が見られた.耳石Sr/Ca 解析により,大橋ダム上流の個体群のダムによる陸封化が確認された一方,貯水ダムの存在しない鮎喰川,貞光川の個体において降海していない個体が確認された
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© 2013 応用生態工学会
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