応用生態工学
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事例研究
イシガイ類を指標生物としたセグメント 2 における氾濫原環境の評価手法の開発:木曽川を事例として
永山 滋也原田 守啓萱場 祐一根岸 淳二郎
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2014 年 17 巻 1 号 p. 29-40

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抄録

直轄区間における河川整備計画や自然再生計画の立案に寄与することを目的に,セグメント 2 に区分される低平な自然堤防帯を流れる沖積低地河川において,イシガイ類を指標生物とした河道内氾濫原環境の簡易な評価手法を開発し,精度検証,評価結果の活用例の提示,課題の抽出を行った.開発した評価手法のフローを以下に示す.まず,(1) イシガイ類の生息可能性を 3 段階評価で表す “回帰モデル評価マップ” と,(2) 氾濫原水域の有無を 2 段階評価で表す “氾濫原水域マップ” を作成する.そして,(3) それらの評価の組み合わせから得られる 6 段階の評価区分を面的に展開した “総合評価マップ” を作成する.高い汎用性を実現するため,評価に要するデータは,直轄区間で一般に取得可能なもののみとした.また,回帰モデルの説明変数として冠水頻度を用い,評価単位として 50 m の正方形メッシュを採用した.精度検証の結果,イシガイ類の生息水域 17 箇所中 15 箇所 (88.2%)は,モデル評価値が高く,氾濫原水域もある最も高い評価区分に該当した.また,非生息水域 20 箇所中 13 箇所 (65.0%)は,氾濫原水域がないと判定される評価区分,もしくは水域はあるが生息可能性がやや劣るとみなされる評価区分に該当していた.以上から,本評価手法は,イシガイ類の面的な生息分布を一定の精度で予測でき,河道内氾濫原環境の現状評価に使用可能であると考えられた.ただし,構築したイシガイ類の生息に関する回帰モデルの適用範囲は,本研究対象地のように,陸域の樹林化が進行した低地河川に限定される.そのため,今後は,異なる特性を持つ河道で適用可能なモデルを構築する必要がある.また,冠水頻度を面的に表現するために行った水位観測所を基準とした水位変動特性の内挿法は,勾配の不連続点や変化点を考慮できていないため,今後は,この点を改善する必要がある.

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© 2014 応用生態工学会
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