応用生態工学
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流域地質の異質性からみた山地河川の河床材料構成と底生動物の関係:櫛田川流域における現地観測
Takashi TASHIROTetsuro TSUJIMOTO
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2015 年 18 巻 1 号 p. 35-45

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抄録
本研究では, 流域地質が河川の底生動物群集に及ぼす影響を解明することを目的とした. 流域地質の異なる櫛田川流域の山地河川を対象に, 瀬・淵において河床堆積物を採取し, 河床材料と底生動物を分析したところ, 以下のような成果が得られた. 流域地質と河床材料の関係に関し, 瀬の大礫については, 流程における違いは顕著でないが河川間で扁平度・密度が大きく異なり, その河川の上流域に存在する結晶片岩 (三波川帯変成岩) や未固結堆積物 (朝柄川) によるところが大きかった. 一方, 淵の砂礫の粒度分布については, 上流域が秩父帯の堆積岩類の場合, 三波川帯を流れる相津川, 領家帯を流れる仁柿川よりも相対的に粗かった. 三波川帯を流れる相津川では, 脆く扁平な形状の材料とそれらの折り重なった狭小な河床間隙空間により, 携巣型や匍匐型昆虫などの生息が阻害され, (特に淵において)生息密度や種の豊富さが相対的に小さくなった. ただし, 瀬では固着型のウスバガガンボ属の一種, 淵では平たい体型で流されにくいタニガワカゲロウ属のオニヒメタニガワカゲロウなどが多く生息した. 秩父帯の蓮川や領家帯・三波川帯に跨って流れる月出川では, 多様な起源の材料から多様な河床間隙空間が形成され, 間隙をより立体的に利用する遊泳型昆虫が多くなることなどにより, 総個体数密度や種の豊富さが大きくなり, 相対的に豊かな底生動物相が成立した. 領家帯を流れる仁柿川では, 丸い玉石状の大礫と細粒な真砂の影響により河床間隙が埋没し易いため, 匍匐型昆虫の生息が阻害される一方, 細粒分で営巣して礫表面を這いまわる携巣型昆虫は多くなった. 瀬・淵ともに個体数密度は小さかったが, 砂底を利用するフタスジモンカゲロウやキイロカワカゲロウなどにより, 淵での種の豊富さは多い傾向にあった.
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© 2015 応用生態工学会
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