抄録
本論では,これまで世界および日本で行われてきた河川地形と生息場の分類体系について,特に「空間スケール」と「流程」に着目して体系的な整理を行い,課題を抽出するとともに,流程全体に適用するための検討および提案を行った. セグメントスケール(流路幅の103~104 倍)の分類体系は流程全体を網羅していたが,縦断的に大きく変化する山地河川の河道特性を表現するには不十分であった.しかし,この課題は,山地河川で確立されたリーチスケールの分類体系を活用し,小セグメントに区分することで解決できると考えられた. リーチ(流路幅の101~102 倍)と流路単位スケール(流路幅の100~101 倍)における分類体系は,国外において,3 次以下の山地河川を主な対象として確立されていた.これらの分類体系は,国内で行われた先駆的な分類体系をカバーしていた.また,これらの分類体系は,峡谷,谷底平野,臨海沖積平野を流れる 4 次以上の河川にも適用できると考えられた. 流路単位内のパッチであるサブユニット(流路幅の10-1 ~100 倍)は,対象とする生物,環境,調査の目的等によって無数に分類可能である.しかし,地形や平面流況に着目することで,普遍的なサブユニットタイプを見出すことは可能であり,特に流路幅の大きな沖積大河川では,それが生物の生息場利用を把握する上で,重要な空間単位であると考えられた. 空間スケールごとの河川地形の分類を適用することで,対象河道の物理的,生態的な特徴を把握することができるようになる.これを関係者間で共有することにより,円滑な議論,適切な決定ができるようになり,効果的かつ効率的な河川管理につながると考えられる.