応用生態工学
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原著論文
コウノトリ Ciconia boyciana の再導入個体群における安定同位体比を用いた食性解析
田和 康太佐川 志朗三橋 陽子
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2016 年 19 巻 1 号 p. 13-20

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抄録

兵庫県但馬地域では,2005 年からコウノトリの再導入が進められている.しかし,再導入された野外個体群の食性に関する詳細な情報は得られていない.また,但馬地域周辺に生息する野外個体群の大半が人工給餌に依存しているのが現状である.本研究では,コウノトリの飼育個体群と野外個体群において,炭素・窒素安定同位体比を分析し,各個体群の食性を推定した.その結果に基づき,人工給餌が野外個体群に与える影響について検討した.

炭素・窒素安定同位体比は,野外個体群に比べて飼育個体群において高く,両個体群間の栄養段階には大きな違いがあると推察された.また,野外個体の中でも給餌依存個体群の炭素・窒素安定同位体比が自立採餌個体群に比べて高くなる傾向があった.このことから,マアジなどの人工給餌によって与えられる栄養段階の高い魚類への依存度が,コウノトリ各個体群の栄養段階の違いに反映されているものと考えられた.

以上より,人工給餌の影響によって,野外個体群の食性が本来示すものと乖離している可能性があるため,今後は野生絶滅前個体群と現在の再導入個体群とで食性を解析するなどの,更に詳細な検討が必要である.

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© 2016 応用生態工学会
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