応用生態工学
Online ISSN : 1882-5974
Print ISSN : 1344-3755
ISSN-L : 1344-3755
短報
農業水路の環境配慮区間における魚類の移動と有効性
久保田 由香門脇 勇樹佐貫 方城中田 和義
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 20 巻 2 号 p. 213-219

詳細
抄録

農業水路における環境配慮区間内での魚類の移動および有効性について検討することを目的とし,複数の環境配慮工法が施工され,非灌漑期においても水涸れしない岡山県総社市の農業水路に 5 ヵ所の調査地点を設定し,調査を実施した.この調査では,2014 年 7 月から 2015 年 12 月にかけて計 6 回,主要生息魚種のフナ属・アブラボテ・カネヒラ・ヌマムツ・ドジョウ・ドンコの 6 種を対象とした標識魚の追跡を実施した.その結果,計 133 個体の標識個体が再捕獲され,そのうち 114 個体は環境配慮区間の同一地点内で捕獲された.すなわち,長期間に及び環境配慮区間の同一地点に留まる個体が多数認められた.このことから,調査水路に施工された環境配慮工法は,魚類に対して好適かつ恒常的な生息場を提供していると考えられた.したがって,非灌漑期でも通水があり水深が低下しない水路では,有効な保全工法を伴う区間が確保されていれば,魚類の恒常的な生息場として有効に機能すると思われた.

著者関連情報
© 2018 応用生態工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top