2019 年 21 巻 2 号 p. 145-158
福島県阿武隈川水系三春ダムでは,制限水位方式のダム運用を行っており,通常,洪水期の開始直前に貯水位を低下させる.ちょうどこの時期は,外来魚の繁殖期と重複し,オオクチバスの産卵開始の目安とされる 15~16℃に表面水温が達する時期が含まれる.このため,ダム湖に特有の計画的な水位操作パターンに工夫を施し,外来魚の繁殖抑制を試みた.通常のダム操作は,貯水位を一定の割合で低下させていくが,三春ダムでは,途中で 2 ~ 4 日程度,水位を一定に保持してオオクチバスの産卵床形成を促進させ,その後,貯水位を低下させて産卵床を干出した.その結果,貯水位を一定に保った水深から 0.5 ~ 2 m 下に産卵床が多く観察され,段階式水位操作により,多くの産卵床を干出できることを確認した.繁殖に成功した稚魚を捕獲し,個体サイズ,耳石から産卵日を推定すると,水位低下中の繁殖成功は少ない結果となった.また,4 段式水位操作と 3 段式水位操作では,前者で繁殖成功数は少なく,より効率的に繁殖を抑制させる結果となった.個体群数の将来予測では,4 段式水位操作の場合,個体数は横ばいで,増加は抑制されると推定された.これらのことから,4 段式の水位操作により,貯水池内のオオクチバスの繁殖抑制は可能と考えられた.