2019 年 21 巻 2 号 p. 159-170
三春ダムでは平常時最高貯水位~洪水貯留準備水位までの水位差 8 m の範囲で,近年アレチウリが目立ってきた.とりわけ,ダム湖岸工事等に伴い,非洪水期における貯水位上昇が遅くなった 2009 年以降,アレチウリ群落の拡大が目立ってきた.本研究では,非洪水期のアレチウリの果実に対する着水日数の減少が,アレチウリの繁茂と関係があると仮説を立て,果実の耐水性などの生態特性に注目し研究を進めた. 三春ダム湖畔で果実の成熟状況を観察した結果,10 月に緑色から茶褐色に変化する果実が多く,この時期に果実は成熟すると考えられる.緑色果実と茶褐色果実は耐水性に差があり,緑色果実は全ての果実が 178 日で水中に沈み,その後腐敗するものがあったことに加え,翌年の実生発生率も低かった.そのため,三春ダムでは果実が熟する 10 月中旬頃までに着水させられる範囲,具体的には洪水貯留準備水位から 2 m 程度までなら果実の発芽能力を低下させることができると考えられる. 一方,茶褐色果実は,7 か月間の着水期間後も,約 40 %が浮遊しており,浮遊した果実,沈降した果実ともに,翌春は 20%以上の実生発生率を示した.三春ダムでは 11 月になると,アレチウリの果実は茶褐色が増える.非洪水期間中の貯水位は平常時最高貯水位付近に維持されるため,浮遊した果実は平常時最高貯水位付近に拡散・散布され,翌春に発芽すると考えられる.このことが,三春ダムでは平常時最高貯水位付近でアレチウリの分布が多い理由と考えられる. アレチウリを抑制するには,果実が緑色のうちに着水させること,果実を付ける前に刈り取ること,浮遊果実の除去や侵入防止などが考えられる.