応用生態工学
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原著論文
整備済み水田用排水路系における魚類生息の実態分析に基づく環境改善案の提示
松井 明佐藤 政良
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2004 年 7 巻 1 号 p. 25-36

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抄録

本研究は,圃場整備済み水田地区の魚類相保全の観点から,茨城県下館市の整備済み水田用排水路を取り上げ,2002年5月から2003年6月の間毎週1回定期的に実施した現地調査に基づいて,魚類の生息実態,用排水路系の接続の意義および今後の用排水路整備の方法について検討し,以下のことを明らかにした.
1. 定置網を用いて採捕された魚類10種はドジョウ,ナマズのように主に排水路系に分布し水田に移動する魚類,タモロコのように用水路系と排水路系の両方に分布する魚類の2タイプに大別された.
2. 採捕された魚類は全般に灌漑期に多く,非灌漑期に少なかった.また,用水路系で採捕された魚類は少なく,河川から流入した個体と考えられるが,その一部は流水がない非灌漑期に水路中の深みに生息していた.
3. 地表·地下排水の分離処理によって浅い小排水路を採用し小排水路と田面の落差を小さくすること,またそれを支線用水路と接続し用排水路間の往来を可能にすることが,上記2タイプの魚類の保全および水田の高生産性との両立を図る上で有効である.
4. 灌漑期に用水路内に現存した魚類の保全対策としては,灌漑用水の停止前に,支線用水路から小排水路に落水し避難させることが簡便かつ効果的である.

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© 2004 応用生態工学会
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