応用生態工学
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原著論文
都市近郊渓流における木製構造物による流路とサクラマス生息環境の改善
柳井 清治長坂 有佐藤 弘和安藤 大成
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2004 年 7 巻 1 号 p. 13-24

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抄録
北海道札幌市近郊の渓流において木製構造物を造成し,渓流の物理環境構造とサクラマス現存量の変化を4年間にわたって調査した. 設置構造物の種類は,カラマツ間伐材とヤチダモ天然木を使ったログダム,ウエッジダム,およびデフレクターログであり,緩やかな流れと落ち込み淵を造り,渓岸侵食を防ぐことを目的とした. 施工の結果,施工前に比べて水深,流速そして渓床基質は著しく変化した. 落ち込み淵はウエッジダムの下流側に形成され,デフレクターの下流には緩やかな流れ,先端に速い流れが形成された. 施工以前の渓床は大礫が卓越していたが,施行後小礫や砂などが木製構造物の上下流に堆積した. この構造物がサクラマスに与える影響を,下流に標準区,対照区を設定し発眼卵と稚魚を放流してその密度を比較した. この結果,6月には当歳魚は標準区で最も高く,ついで施工区,対照区の順となった. とくに流れの緩い二次流路や水際のくぼ地区間に多く分布していた. また7,8月の密度は標準区が最も高かったが,施工区と対照区の差は殆どなく,施工区内においては落ち込み淵が形成された区間で,サクラマス当歳魚が多く見られた. しかし,10月には釣りの影響と考えられるサクラマス当歳魚の密度低下が生じた. 木製構造物の一部は腐朽して流出したものも見られたが,大部分は渓床を維持·固定していた. このような木製構造物が渓流に与える生態的,地形的な影響を総合的に考慮すると,悪化した渓流環境を改善する一つの工法となると考えられた.
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© 2004 応用生態工学会
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