応用生態工学
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原著論文
琵琶湖に生育する沈水植物の1997年から2003年まで6年間の変化
今本 博臣及川 拓治大村 朋広尾田 昌紀鷲谷 いづみ
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2006 年 8 巻 2 号 p. 121-132

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抄録
水位低下に代表される水位変動が,琵琶湖の沈水植物に与える影響を把握する目的で,1997年(5,924コドラート)と2002年(6,654コドラート)に109測線で空間分布調査を,1999∼2003年にかけて3測線で水位変動応答調査を実施した.その結果,以下のことが明らかとなった.
(1)空間分布調査結果から,2002年は1997年に比べて,群落面積が北湖で15%,南湖で73%,琵琶湖全体で36%増加しており,特に南湖での増加が著しい.
(2)1997年と2002年の調査では,北湖の優占種はいずれの年もクロモとセンニンモ,南湖の優占種はいずれの年もセンニンモとクロモとオオカナダモとマツモであり,この5年間では種組成に大きな変化がなかった.
(3)水位低下による光利用性の向上で,新たに生育可能となった場所に群落を形成した種は,北湖ではセンニンモ,クロモ,イバラモ,南湖ではクロモ,センニンモ,オオカナダモ,マツモであった.
(4)琵琶湖に生育するコカナダモとエビモは,水位低下の発生頻度が高くなっている近年,急激に減少していることから,水位低下による影響で減少した可能性が高い.また,ロゼット型のネジレモは,水位低下にともなう波浪エネルギーの増大によるとみられる影響で,減少する傾向が見られた.
(5)北湖の沈水植物群落の鉛直分布は,水位変動の影響を受けて変化していた.
(6)南湖の沈水植物群落の鉛直分布は,水位の変化から考えられる以上にその群落面積が増加していた.その理由の第1は水位低下にともなう生育期間の延長,第2の理由は経年的な水位の低下,第3の理由は沈水植物増加の正のフィードバックである.
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© 2006 応用生態工学会
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