2023 年 30 巻 1 号 p. 35-39
【はじめに】前庭機能の予測的姿勢制御(APA)への関与を明らかにするため,sham条件と前庭ランダムノイズ刺激(nGVS)条件で歩き出しを実施した。また,前庭への刺激が行われていることを担保するために,立位が傾斜する効果がある直流電気刺激(tDCS)を同貼付位置で行い静止立位時のCoP偏位を確認した。【方法】若年成人に対し,電気刺激装置,三次元動作解析装置,床反力計を用い,0.2 mA,0.4 mAの刺激とsham条件の歩き出しと,tDCS刺激条件とsham条件の静止立位を計測した。【結果】nGVS 0.2 mA 条件でAPA onsetの早期化と,静止立位においてtDCS条件でCoPの陽極方向への偏位を認めた(p=0.03)。APA onsetのその他の条件間,およびAPA peak AP,MLの全条件,また,静止立位中のCoP速度の条件間で有意差は認めなかった(p=0.71-1.00)。【考察】歩き出しにおいて,APAの時間的変数でnGVSによるAPAが機能する可能性を示唆した。