抄録
本報告では, 多摩川永田地区における礫河原の再生とそこに生息・生育する河原固有の動植物の保全を目指した河道修復事業について紹介した. 事業実施にあたっては, 学識経験者, 市民, 行政が一体となって治水・環境の面から河道修復の方法について検討を行った. その結果, 外来種であるハリエンジュの伐採・伐根, 高水敷の掘削による低水路幅の拡大, 河原固有の生物であるカワラノギク等の緊急的な保全を行うための河原の造成, 礫の敷設・供給などが実施された. 生物群集に関するモニタリング調査においては, 河川生態学術研究会多摩川研究グループによって個々の生物を対象とした個体数調査が実施されている. また, そのような生物にとっての生活基盤となる低水路内の地形と植物群落の変化に関するモニタリング調査を行った. 地形調査においては, 有意な出水が発生するごとにGPS (精度 : 鉛直約3cm, 水平約2cm) を用いて縦断距離25m間隔, 横断方向には2~4mの間隔で地形測量を実施した. 植物群落調査においては, 水平精度50cm程度の簡易GPSを用いて初夏と晩秋の年2回植物群落マップを作成した. その結果, 以下のことが確認された. 1) 造成した河原およびその周辺ではカワラノギク・カワラバッタ・イカルチドリといった河原に固有の生物が増加してきている. 2) 砂を堆積させないように造成した河原 (C工区) において, 700m3/s程度の出水時に砂が堆積する場所があった. 3) 永田地区上流に礫を敷設・供給し続けることで, これまで継続してきた河床の低下傾向を抑制できる可能性がある. 4) 裸地に侵入したオオアレチノギク・ヒメムカシヨモギ群落は無次元掃流力が0.13程度となった時に流失することが既に確認されていたが, 根茎の浅い植物の破壊条件として提案されている無次元掃流力0.06程度で流失した.