応用生態工学
Online ISSN : 1882-5974
Print ISSN : 1344-3755
ISSN-L : 1344-3755
航空レーザ計測データによる河道内広葉樹林の樹頂点抽出に基づく樹木本数および体積の推定
手塚 透吾溝口 裕太斉藤 展弘崎谷 和貴
著者情報
ジャーナル フリー 早期公開

論文ID: 23-00021

詳細
抄録

河道内に繁茂する広葉樹林の効率的なモニタリング技術の開発を目的に,航空レーザ計測(ALS)データを活用した樹木の本数や体積などの樹木諸元の推定手法を検討した.既往研究では,樹木の樹頂点を抽出する局所最大値フィルタリング(LMF)の適用において広葉樹林における抽出精度が課題とされた.そこで,本報では,河道内の広葉樹林の解析に適したラスタデータと,LMF のパラメータである Window Size(WS)の検討を深めることで精度向上を試みた.ラスタデータは,広葉樹の特徴を表現するために Digital Canopy Ruggedness Model(DCRM)を考案した上で,従前より用いられている Digital Canopy Height Model(DCHM)との有用性を比較した.また,WS は,既往研究で提案されている樹高(DCHM)に応じた推定式と,調査データにフィッティングを行った推定式である Fitting WS を適用し,樹木の抽出精度や樹木諸元の推定精度を比較した.その結果,抽出精度を示す F-score は,DCRM と Fitting WS の組み合わせが 0.62 と最大であった.広葉樹林を対象とした既往研究と比較して,いくらか高い F-score であるが,針葉樹林ほど高まらなかった.一方で,従前の DCHM やその他の WS の組み合わせよりも抽出精度が高く,考案した DCRM と Fitting WS の河道内の広葉樹林に対する有用性が認められた.調査区ごとでは,エノキよりもヤナギ類が優占する調査区で F-score が低く,ヤナギ類の割合が高い河道内樹林では,樹木の抽出精度が高まらない可能性が示唆された.DCRM と Fitting WS の組み合わせにおいて,樹木本数の推定精度は誤差率が -2% であり,比較的高い推定精度が得られた.体積の推定精度は,誤差率が -30%であり,推定精度は高まらなかった.

著者関連情報
© 応用生態工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top