抄録
乗鞍スカイライン沿線の亜高山帯針葉樹林において,台風7号(1998年9月)の被害調査を行った.強風によるまとまった倒木は,風害地形と思われる猫岳の北西斜面(2,200~2,350m)で3ケ所(0.9ha,2.6ha,1.1ha)確認された.ベルトトランセクトによる毎木調査の結果,林冠部を形成しているアオモリトドマツ・シラベ・トウヒなどの針葉樹に倒木が多いことが分かった.林冠木の下に位置する若木には影響が少なかった.倒木の多くは,斜面方向に垂直な南西方向からの強風によって根返りを起こしていた.林床の植生がクマイザサで被われている林分については,倒木が実生の唯一の更新立地となるので,一部はそのままにしておくことが大切である.