応用生態工学
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水田水域における淡水魚の双方向移動を保証する小規模魚道の試作と実験
鈴木 正貴水谷 正一後藤 章
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2001 年 4 巻 2 号 p. 163-177

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抄録

環境庁が1997年に発表した汽水・淡水魚レッドリストに,絶滅危惧II類としてメダカが掲載されて話題となった.メダカは,河川(恒久的水域)と一時的水域(水田や小水路)の間を移動して,これらの水域を効果的に利用している.また,ドジョウなども同様な生活史を持つ.これらの生息数が減少している理由の一つとして,圃場整備事業があげられる.圃場整備事業は,農業従事者に対して作業時間の短縮や省力化といった様々な恩恵を与えている.一方で冬水の流水停止,水尻や排水路末端の落差形成など水域ネットワークを分断して,魚類の生息環境の悪化を招いている.そこで,工学的な手法による淡水魚類への配慮が求められるようになった.本研究は,水域ネットワークの再構築の一手段として小規模水田魚道の試作と実験を行ったものである.
魚道の試作にあたって,供試魚にドジョウ(底生魚)とメダカ(遊泳魚)を選び,ドジョウについてはあらかじめ遡上行動を観察した.その結果,ドジョウは遡上中に休憩し,遡上の際には引っかかりを利用することが分かった.この結果を参考にして魚道の試作を行い,供試魚を用いた予備実験を行った.そして,カスケードM型魚道と千鳥X型魚道と称する2つのタイプを開発した.また,この2つの魚道について設置勾配や流量を変えた遡上実験を実施し,以下の結果を得た,1)カスケードM型魚道は,ドジョウ(匍匐型,遊泳型)の遡上・降下行動を可能とする.2)千鳥X型魚道は,ドジョウ(遊泳型)とメダカの遡上・降下行動を可能とする.3)ドジヨウの遡上は,夜間に活発化する.4)メダカはドジョウに比べて正の走流性が強い.

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