応用生態工学
Online ISSN : 1882-5974
Print ISSN : 1344-3755
ISSN-L : 1344-3755
観測と再生長モデルによる刈取られたヨシPhragmites australisの回復過程の評価
湯谷 賢太郎浅枝 隆田中 規夫Shiromi KARUNARATNE
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 6 巻 2 号 p. 177-190

詳細
抄録
刈取りは荒廃した湿地の回復や,湿地の植物多様性を維持するための一般的なヨシ原管理手法である.近年開発の進むヨシ生長モデルを基に,湿地管理手法としてのヨシ刈取り再生長モデルを,観測結果を基に開発した.埼玉県さいたま市の秋が瀬公園内の湿地にて,刈取りからのヨシの回復過程を調査するために,3年間の観測を実施した.6月刈取りが最もヨシの生長に悪影響を及ぼしたが,6月刈取り,7月刈取り供に,刈取り後の再生シュートの葉の割合を0.28から0.56に増加させた。6月刈取りはシュート高さおよび乾燥重量と地下茎乾燥重量を減少させた.一方では,ヨシは夏場の刈取りから2年間程度で回復し,ヨシ原管理には,1年もしくは2年おきの刈取りが必要であることが示された,改良したヨシ刈取り再生長モデルは刈取りと野焼きに関して,本観測結果と既往文献のデータをよく再現した.モデル計算の結果,栄養状態の良い環境に生育するヨシは3年から4年程度で刈取りから回復するが,栄養状態の悪い環境に生育するヨシでは,10年以上を要する場合もあることが示された.
著者関連情報
© 応用生態工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top